MDAホーム 体験イベント 【イベントレポート】2011.6.19.Sun.MDA2010授賞式・結果発表

2010年度プログラム

これまでのイベント


Medical Design Award 2010 授賞式レポート

2010年11月のスタートアップカフェを皮切りに始まったメディカル・デザイン・アワード。その後数々のイベントを経て、ついに6月19日(金)に授賞式を迎えました。
作品応募期間は2011年1月15日から4月30日まで(震災の影響で当初の3月末から延長)、全8部門にわたり計31作品の応募が集まりました。授賞式では入賞5作品のプレゼンテーションが行われ、その後、審査員による各部門講評と各賞が発表、トロフィーも授与されました。
後半は東京都看護協会の嶋森会長のご講演、さらに医療とデザインのそれぞれの現場で活躍される方々のトークライブが行われました。以下、各部門ごとの応募作品一覧と講評を中心にレポートをお届けします。

メディカル・デザイン・アワード2010 総評

実行委員長 飯島ツトム氏プロフィールはこちら
MDAの原点は、医療現場に内在する課題に対し積極的に理解をすることです。一方的に賞を与えるという既存のアワードとは異なり、いくつかのプロセスを医療従事者/デザイナー/企業という色々な方々と共有し、ワークショップやセミナーで体験と情報交換を重ねることに重点を置いた「体験型コンテスト」としてスタートいたしました。

課題を各企業から提案して頂き、解決につながる方法や製品の双方をデザイン(可視化・情報整理)した「作品」を、デザイナーだけではなく誰からでも応募も可能としました。また、当初各部門より選出した部門賞(優秀賞)の中からグランプリを決定する、という流れでしたが、「商品化を目指す」という目標のもと、部門賞以外にも奨励賞、審査員特別賞を設けることとなりました(右上図参照)。

このように、MDAは授賞式を迎えるまで手探りのまま進化してまいりました。残念ながら商品化という観点からは入賞されなかったとしても、すべての応募作品それぞれにすばらしいアイデアが詰まっています。小さくてもできるだけ多くのアイデアを実現し誰かの役に立てること、つまり社会化することは非常に重要です。
治療を受ける側、施す側双方の医療の現場において、悩まれている方/痛みに耐えている方々/現場の混乱の中にいる方/不安をもたれている方など、多くの方々がそれぞれの「課題解決したい」との願い真剣に考えています。MDAがその解決の糸口となり得ることを強く願っております。
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移動部門

課題

「医療・介護施設におけるセグウェイの可能性とは?」
課題提供企業:セグウェイジャパン株式会社
募集内容詳細 スペシャルコンテンツ

応募作品・結果(敬称・所属略)

全1作品/該当なし

「医療・介護施設におけるセグウェイの可能性とは?」 松田正明
部門評

審査員 田中 一雄氏プロフィールはこちら
応募数が大変少なかったことが残念です。セグウェイさんが出題企業となっていただいたが、セグウェイの良さを活かしたソリューションになり切っていなかったように思います。提案作品は、患者の立場からの視点が入っていてすばらしかったのですが、セグウェイである必然が弱く惜しまれました。
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コミュニケーション部門

課題

「院内における円滑なコミュニケーションの為の仕組みづくり」
課題提供企業:コクヨ株式会社
募集内容詳細 スペシャルコンテンツ

応募作品・結果(敬称・所属略)

全8作品/審査員特別賞2点

審査員特別賞

「Nursecall Record Application Software」 柴田麻衣子
「小児がん食事基準の可変性に対応した携帯サイト」 岡崎章

「iPad LINK」 池谷友弥
「回復期リハビリテーション病棟におけるピクトグラム」黒木博文
「○×伝言ノート」秋山学
「心理量を物理量に置き換えて心の変化量を知ることができるツール」岡崎章
「携帯情報端末を活用したトレーサビリティシステム」伊勢田順一
「簡易なポータブル検査テスト用プリンター」山本典子
部門評

実行委員長 飯島ツトム氏
医療の現場における課題を今回のアワードを通して見ていくと、「デザイン」というテーブルにのせることにより、様々な種類のコミュニケーションが存在していることが明示化をされました。医療従事者同士、医療従事者と患者はもちろん、今回審査員特別賞になった作品では、病院側と保護者の方々とのコミュニケーションがクローズアップされています。
残念ながら今回コミュニケーション部門賞はありませんでしたが、それだけコミュニケーションに多様さがあり、そこにデザインが手を付けるべき課題がたくさん見ることができました。同時に、いかにデザインと医療現場がまだ離れているかという点も痛感いたしました。
次年度はコミュニケーションをもう少し深堀することが重要なポイントになると思います。また、デザインにおいては、単なる表面的な色や形を作ることではなく、物事の本質をとらまえてよりよい形へリメイクするという新しいフィールドも出てくることでしょう。
コミュニケーション部門の応募作品を拝見したことにより、医療現場がただ「現場」というだけでなく、我々の命に関わる大切なコミュニケーションの場であるということを改めて自覚させていただくことができました。
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入院生活部門

課題

「より快適な療養生活のための衣類とサービス」
課題提供企業:株式会社柴橋商会
募集内容詳細 スペシャルコンテンツ

応募作品・結果(敬称・所属略)

全3作品/該当なし

「fashionable & cozy パジャマ」三森重郎
「(作品名なし)」石川恵美子/只野江里子
「(作品名なし)」(個人名なし)
部門評

審査員 鶴丸 礼子氏 プロフィールはこちら
全国から応募作品がどれ位集まるのか、どの程度の専門性に達しているのか。そもそも、それらを評価する見識が自分にあるのかと思い悩みながらも、審査会の日までが楽しみでした。
衣服の部門では3作品の応募がありました。そのうち、着色したきちんとしたデザイン画が添えられていたものは1点しかありませんでした。
病院や施設、在宅療養の現場では、医療行為に従事する側・される側の双方とも、着衣に満足していない人が少なからずおられると想像します。退院のメドがある人や、進行性の病を患っている人。また、僅かな工夫により、自力で衣服の着脱が出来る人など、それぞれの境遇に応じて、着衣に求められるものもまた様々です。
どんな症状の人が、どこをどのように工夫したら着やすくなるのか。寝たきりの人の衣服のどこをどのように改良したら介護する側の負担を減らせるのか。既存の衣服をどのようにリメイクしたら、障がいのある人たちが「私も着てみたい」という意欲を持てるようになるのか……。

形の問題にとどまらず、素材をどう選ぶかも、QOLに大きく関わるだけに重要です。着心地にかかわる伸縮性やすべりやすさ、耐摩耗性や堅牢度、紫外線を遮断できるかどうかといった物理的な特性に加え、生地の色や柄をどうするかという心理学的な観点からも、入念に吟味したいものです。

リウマチ患者や障がい児といった、具体的な対象を意識した、専門的な衣服の応募作品を次回からは期待しています。医療や介護の現場からの生の声を反映した、本当に喜ばれる作品を完成するには、それを着てくださる方と1分でも長く時間を共有し、改善策を共に生み出す姿勢が不可欠と考えます。そのためには、善意からさらに一歩踏み出して、改善すべき課題を探る為に当事者たちとコミュニケーションを図るという、積極的な行動を起こすことも必要だと思います。

しあわせな医療を考えるうえで、作った人も着る人もしあわせになれる「衣」療が重要な一側面を担うことが、今後ますます認識されていくことになると思っています。

MDAの事務局・応募された方々・応援された企業様と関係者のみなさまに感謝致します。
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療養環境部門

課題

「療養空間を豊かにする家具(間仕切り家具)の提案」
課題提供企業:株式会社岡村製作所
募集内容詳細 スペシャルコンテンツ

応募作品・結果(敬称・所属略)

全6作品/部門賞1作品

部門賞

「By Your Side いちばんそばにいる間仕切り家具」齋藤佳

「繭でつつむいやし」丸井典子
「スマート・メディック」阿部正二
「移動式住居から創造する、病室での新しい生活空間」福嶋一之
「病室間仕切家具(MY SPACE PARTITION)」徳丸裕子
「Pi’colo kitchen、 Pi’colo 床頭台&Over sidetable」山本典子
部門評

審査員 田中一雄氏
やはり皆さんも入院の経験や、そうした方を間近にいらっしゃることもあるでしょう。そうした経験から、多くの提案が出たようです。これはうれしいことです。受賞に結びついた作品は、医療現場で重要な家具備品の「移動」ということに着目しています。具体的には安定性の問題などまだまだ商品化に向けた課題はあると思いますが、必要とされるニーズを顕在化し、それを美しくまとめあげているという点を評価し部門賞として選びました。
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介護部門

課題

「病院から介護施設へのスムーズな移行」
課題提供企業:ローゴプラス
募集内容詳細 スペシャルコンテンツ

応募作品・結果(敬称・所属略)

全1作品/該当なし

「医療と介護における情報の共有化に 向けたアイデア」窪左千江
部門評(在宅医療部門との総括)

審査員 横井 郁子氏 プロフィールはこちら
介護部門と在宅医療部門では部門賞の該当はありませんでした。また、応募が非常に少なく残念でした。少ないながらも応募されたものから見出したもの、それはこの2つの分野に共通することは「個」に向き合ったものであるということでした。疾患や障害を持ちながら、その場所で生活する人のためのシステム開発や作品といったものが個別性、地域性に富むことはいわば当然のことです。これらを製品化するというのは非常に高いハードルと思われます。しかし、審査員からは個々の創意工夫を集約し周知する方法論の提案もデザインの役割ではないか、など議論が展開し、私自身、非常に勉強になりました。
また、次回からは応募方法などの工夫が必要な分野と思われます。
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在宅医療部門

課題

「より安全で快適な在宅医療に必要となる製品のアイデア・使い方の工夫」
課題提供企業:株式会社ジェイ・エム・エス
募集内容詳細 スペシャルコンテンツ

応募作品・結果(敬称・所属略)

全3作品/該当なし

「在宅医療が安全で快適であるための 現場アイデア」奥山麻里
「(作品名なし)」幸松杏子
「在宅医療でのさまざまな工夫について」窪田会利子
部門評

審査員 横井 郁子氏
※介護部門との総括のため、上記をご参照ください。
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輸液ライン部門

課題

「臨床現場における輸液ラインの管理・実施方法の工夫」
課題提供:医療サービスコンソーシアム
募集内容詳細 スペシャルコンテンツ

応募作品・結果(敬称・所属略)

全8作品/大賞・部門賞1作品、奨励賞1作品

大賞

「静脈ライン情報表示ラベル『いろぴっと』」
田中純哉

奨励賞

「Drip Adjuster」田中範佳

「輸液にまつわるトラブルを解決します!」中村あづさ
「これで迷わない!末梢静脈穿刺」中村あづさ
「薬剤管理移行のスリム化」志賀麻美
「末梢血管確保キット『はり・パック』田中純哉
「一般病棟用輸液ポンプmono(モノ)」田中純哉
「輸液・シリンジポンプ医療安全プログラム企画」西嶋克基
部門評

審査員 横井 郁子氏
高度の技術と多種多様の情報が飛び交う急性期の医療現場に登場する輸液。場の特殊性から、いかにあふれる情報を整理し、確実な行動を導くか。まさにデザインの本領発揮の場であったように思います。今回グランプリをとられた「いろぴっと」は、現場を知り尽くした麻酔科医でありデザイナーによる「整理整頓の形」だと思いました。
高度医療には高度な技が必要なのか、個人的にはそうではないと考えています。それを示してくれたのが「Drip Adjuster」です。本作品は、昔ながらの看護師がクレンメを調節して自然滴下させる方法を進化させた物です。看護師にとっては簡単で、LEDの点滅は夜間の観察にありがたいものです。しかし、機能だけではなく、デザインには優しさも感じられます。夜は蛍が舞っているような光景になるのでは、と勝手に想像してしまいました。
輸液部門では、急性期医療の現場にデザイン性の高いローテク製品が実は求められているのでは、と考えさせられました。
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トロフィー授与

各部門の発表の後、入賞者5名にそれぞれトロフィーが授与されました。
【写真左】輸液ライン部門の部門賞でもあり、MDA2010の大賞を受賞された田中純哉さん(右側)にインタビューする運営事務局長・八村大輔氏(左側)。
【写真右】同じく輸液ライン部門において奨励賞受賞の田中範佳さんは会場投票による観客賞とのダブル受賞。右側は観客賞商品を手渡す日本インダストリアルデザイナー協会・理事長の浅香嵩氏。

次に、審査員で弁理士でもある上條由起子氏より、開催期間中に審査員より提案・設定された「商品化活動支援制度」についての解説がありました。本制度では応募者と課題提案企業との間にMDA運営事務局が入り、仲介機能や応募者の代理機能を果たし、両者の商品化に向けた交渉や調整を行って商品化契約に至るまでの支援を行います。MDA入賞の有無にかかわらず、応募者より任意で申込を受け付けるものです。
解説資料はこちら(PDF)

特別講演・トークライブ

続いて、東京都看護協会 嶋森会長の特別講演です。医療安全の実現には医療者だけでは難しい、異なるジャンルからの協力が必要と考えていた嶋森会長が、日本看護管理学会の第14回(2010年8月20日〜21日)にて学会長を務めた際に考えた企画が「安全管理のための看護師とデザイナーのコラボレーション〜気配をデザインする〜」。デザイナーに医療現場を見てもらい一緒に議論ができれば、看護師見えないものがもっと見えるようにしてくれ、改善策も提案してもらえるのではという期待を寄せられました。また、それによって患者さんのQOL向上、さらには社会全体が安全/幸せになっていくであろう、という提言を頂きました。

写真撮影(一部):坂元永/出典(一部):「看護」2011年8月号グラフ(日本看護協会出版会発行)
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応募受付期間:2011年1月15日(土)~4月30日(日) 参加資格:どなたでも

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