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特別対談「なぜ、いまメディカル・デザイン・アワードか」

医療がいま直面する課題をデザインの力で解決するというコンセプトのもと、「幸せになれる医療」を目標にメディカル・デザイン・アワードが開催されます。今回は、アワードの中心人物となる手取屋・飯島両氏に、医療とデザインに関する論議をアワード形式で行うことの意義についてお話いただきました。

アワードである理由、その意義とは

飯島 このアワードの役割は3つあると考えています。ひとつは、これからの医療に対する「ものさし」を提示できる機会となり得ること。ものさしを作るときには、患者さんや医療・看護に関わる人はもちろん、すべての人が医療に対する固定概念を捨てる必要があります。日本がフラットに医療を考えるべき今のタイミングでものさしを提供することが、アワードを運営する我々のミッションではないかと。2点目に、デザイン・シンキングやイノベーション・シンキングという、本質を直感的に捉えて抽出する思考方法を医療に役立てるということ。3点目としては、「こうあるべき」という論じ方ではなく、想像力を刺激し考え方をいかにマッサージできるか、ですね。
手取屋 なるほど、私もその3点には賛成です。もともと、私がアワード形式をメディカル分野でも取り上げたいと思ったのは、良いものを生む・発見する・継続するためにアワードが適しているのでは、という視点からです。
医療はあまりにも複雑で奥深く、医療分野におけるビジネスモデルの構築は特に日本では決して容易ではないとされています。その難しさを何とかクリアして良いムーブメントを作り出すことが必要ですし、実際、最近は院内アワードが催される機会も増えてきました。誰かを愛でることが、より良い医療のきっかけになってほしいと思います。
医療事故などの背景から「後ろ向きの医療安全」でしか医療を見ることができなかった時代から、ようやく一生懸命やっている人たちをほめ、良い部分に光を当てる時代になってきたのではないかと思います。
飯島ツトム  【MDA実行委員長】(CO-WORKS代表 コンセプター/環境プランナー)
飯島 「愛でる」という表現には共感しますね。では、先生は1人の医師として、このアワードの意義をどうお考えでしょうか?
手取屋 大きく捉えると医療のリスクコミュニケーション(医療をとりまく関係者間での意思疎通)のひとつだと思います。社会に対するメッセージとして、医療の現場、とくにがんばっている医療従事者の様子を見てもらえれば。我々は当たり前だと思っていることも、他者から見ると「こんなにがんばってくれているんだ」という内容かもしれない。そうした他者の気づきが医療従事者に還元されれば、またさらにやる気につながっていきます。
また、患者さんやその予備軍であるすべての人にとっても、現場のリアルな声を知ってもらうこのような機会は、非常に良いリスクコミュニケーションになるはずです。メディアが提供する情報に偏りが生じることはどうしても避けられないでしょう。でも、自分たちの体に触れる医療従事者がどんな風にがんばっているか、これは本当の現場から発信する必要があると思います。

デザインが医療にもたらすもの

飯島 さらに、いまの「患者さんは治してもらう側」「医療従事者は治す側」という認識が、医療における問題を一緒に解決するという方向に向かうことで、平等な関係性に変換させるという役割が、デザインのプロセスの中に備わっているのではないでしょうか。また、デザイナーやコピーライター、フォトグラファーなどにとっても、命を預かる医療というステージでデザインを考えていくことに大きな意義があると思います。
手取屋 確かにそうですね。以前にあるデザイナーさんから「一つの目標に様々な人たちが向かっていく時に、それぞれのシチュエーションの違いから生じる矛盾を解決するために、デザインの本質がある」と伺い、医療とデザインが実は非常に身近なものだと感じましたね。医療は非常に不確かな中でバランスをとっているのですが、患者さんは病院が完璧な場所だと思う矛盾が生じています。
手取屋岳夫  【MDA実行委員、審査員兼任】(昭和大学医学部外科学講座 胸部心臓血管外科 主任教授/医学博士)
飯島 医療現場とまったく異なる視点が加わることで、解決の糸口が見つかりやすくなるかもしれませんね。あと、医療の現場は教育の場でもありますよね。たとえば、人間の直感に働きかけるブランディングの手法を利用し、思いや注意を込めたシンボリックなデザインを見て若手が上司から受けた教えそのものを思い出す。これもデザインによるアプローチのひとつと言えます。では最後になりますが、先生はアワードをどんなステージにしていきたいですか?
手取屋 そうですね、交流の場であるサロンとしてのステージングを取りながら、自然と学びが生まれる場であってほしいと思います。医療自体がまだまだ不確実なものだからこそ、学ぶことはここかしこに常に存在しています。通院頻度や治療内容によって異なりますが、患者さんが医療側を非常にシビアに見ています。私たち医療従事者は患者さんに敬意を払って、患者さんが幸せになれる医療を慎重に提供していく必要がありますから。
今回のアワードでは、医療現場で遭遇する機会の多い課題をテーマとして取り上げていきます。焦る必要はありませんが、まず自分の身近な課題からスモールスタートさせることが、医療政策を含めて日本の医療をより良くするきっかけにつながっていくはずです。信念を持って医療に臨んでいる自分のものさしをもっと信じてほしい。このアワードがそのきっかけになることを願っています。
飯島 ものさしを提供して固定概念を取り払う。物事の本質となるツボを見極める。ツボの押し具合でメッセージの内容や伝え方を工夫する。ツボを押して返ってくる反応をまた捉えていくというように、相互に成長していける。異分野の方々が集まって共通項を見出していくのは、この対談だけでも有意義なプロセスなので、アワードでの多くの方々との交流にも期待が高まりますね。今日は本当にありがとうございました。
手取屋 こちらこそ、どうもありがとうございました。
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